鞍掛沢二泊三日釣行 最高の幕営地発見

日帰り可能な沢を旅するように歩く

南アルプスの天然水をたたえる鞍掛沢は、日帰りでも遡行可能なルートです。
しかし沢登りをやるならば、やはり焚火を囲んでの沢泊りを満喫したいところ。
今回はそれを二泊三日にまで引き延ばしての、鞍掛沢しゃぶり尽くしプランです!

鞍掛沢は困難な登攀もなく、尾白川本流のスケール感と鞍掛沢の癒しの渓流感、そして乗越沢のシャワークライミングを楽しんだ後は、日向山の天空のビーチを経由して下山するという、もりだくさんのルートであると同時に、釣りも楽しめるという最高な沢です。

かつて山で知り合った人と行った記録はこちら

登山道の向こう側

初心者を連れて泊りで行く沢に最適。ロープを出さなくとも遡行できて、なおかつ美しい沢。日帰りも可能で、釣りもできる。…

エメラルドグリーンの水が花崗岩の白い川床に映えて美しく、幕営適地も豊富にあり、何度でも行きたくなるというか、住みたくなります。
そんな鞍掛沢を、釣りをメインとして遡行しながら、旅するように沢を歩く。
そんな私達のアナザースカイ。

駐車場~入渓点

12時ごろに日向山登山口を出発。
本来は乗越沢出合で二泊する予定でしたが、塩尻・岡谷間が事故通行止めにて集合時間に大幅な遅れが生じてしまいました。
しかし結果的に、これが功を奏すことになります。

日向山登山口はこちら。
駐車可能台数が少ないため、乗り合わせで来るべし。

日向山登山口から立入禁止をくぐって、一部崩落した林道を小一時間歩くと、錦滝です。
アイスクライミングのメッカです。

冬の錦滝がこちら。
この上にももう一段滝があって、アイスクライミングで度々訪れました。

林道を2時間ほど歩き、3つのトンネルを越えたら、間もなく林道の終点です。
終点の少し先の斜面に、今にも切れそうなロープがフィックスされていますので、それを少しだけ頼りにして下るか、自前のロープで懸垂下降しましょう。

降り切ったら、そこは楽園。

暑い、重い、とぼやきながら歩いてきた私達は、うひゃひゃひゃと叫びつつ、キンキンに冷えた南アルプス天然水へ飛び込みます。
T青年は終始無言で歩いていましたが、内心は暑くて重くてしんどかったようです。
ビール担ぐの押し付けてごめんね。

歩き始めが遅くなったことだし、今日はこのへんで泊まっちゃおう!
それが沢のいいところです。
これまでは、乗越沢出合で泊まることしか考えていなかったのですが、違う視点で見てみると、入渓点付近は素晴らしい幕営適地!
本当は乗越沢との出合付近で二泊する予定にしていましたが、当初の計画などどうでもいいのです。
私達が向き合うべきは「計画」ではなく、今目の前にある山や沢なのです。

あっという間に、尾白ニュータウンが出来上がりました。

焚火を囲む宴会場は、流れを目の前にしたここで。
倒れた草が、つい最近の増水の様子を物語っています。
尾白川本流の増水・・・想像するだけで恐ろしい。

薪は実に豊富で、あっという間に必要な分を集められました。
焚火調理のために、薪を組むのに余念がないT青年。

着火剤はこれがいい。
あれこれ試した結果、このタイプが最優秀賞でした。

おっと、その前に一番大切なことを忘れてはいけませんよ。

くぅ~~~

うまいっっ!!!

とりあえず乾杯の後は、おつまみ調理タイムです。

ナスを刻んでいたNおじさんに、不幸な事件発生。
T青年が「心配ナス」となぐさめる。

でもまだナスあるもんね、と強がる。

最終的には、ニンニクとショウガが効いた、美味しい炒め物になりました。
いや~、ビールに合う!!!

T青年は焼き網を準備。
100均の小さな網と、私が持参した焼き串を、うまいこと組み合わせました。

そして鰻の白焼きをあぶり始める!!!
わさび醤油が合いそうだね~という私の言葉に、

「わさび持ってきてますよ」

というT青年。
気が利きすぎじゃありませんか!?

またもや不幸な事故発生。
ご飯を炊いていたのにひっくり返すという、残念なことに。
拾い集めるのが大変です。

iPhoneとビンディの性能がすごくて、夜でもこの明るさの写真が撮れます。
ほろ酔い(?)で沢の流れを楽しむ、至福の時。

二日目 入渓点~乗越沢出合

翌朝も好天!
ミソサザイのさえずりを聴きながら起きて火を熾し、煙が渓にたなびく様を眺める沢の朝。
これが最高なので、沢は泊りで行きたいのです。

T青年が豚汁を作ってくれました。
美味い!!!
もう今後は朝の味噌汁担当です。

沢の朝を満喫していると、見るからに釣り師の姿をした男性がひとり、入渓して我々の方にやってきました。

「おはようございます。あの、沢登りの方たちですか?えっと、この表現が正しいか分からないのですが、今日はどこまで詰めるんですか?」

なんか好感度が高いなぁ。
そしてベテラン釣り師の雰囲気をまとった彼に、こんな平日の早朝に入渓してきたのに先客がいてガッカリしただろうなと申し訳なく思いつつ、本日の行程について会話しました。

渓流釣りのルールとして、先行者がいる場合は追い抜いてはいけません。
誰かが歩いた後の沢では魚も警戒し、釣れにくくなるからです。
できるだけ朝早く、そして人が入りづらくて、なおかつ魚がいる川、そしてアプローチも・・・とあれこれ考えて平日の早朝に来ただろうに、さっそくなんか変な人たちが泊まってるよと、落胆したことでしょう。

ひとしきり情報交換後、歩き始める前に、Nおじさんは魚の様子を見に行きました。
しばらくして戻ってきて、「魚はいるけど遊んでくれない」と言いますが、はじける笑顔が楽しそう。

しかし遊んでくれるイワナちゃんもおりまして、こちらはロバートと命名されました。

夫婦滝。
つるつるですが、左側を登ることができます。

私はフェルトで登り、T青年はラバーで登ってきます。
つまり、どちらでも問題なく登れました。
しかしNおじさんは、足も靴も信じられなかったようで、フリーズしてしまいます。

そんなNおじさん目線の写真がこちら。
お助けにくる我々を撮影していますが、指が入り込んでしまうほど余裕がなかったのでしょう。
チワワのような眼をして、お助けを待っていました。

ふと気づけば、こんな支点が。
どんな事情があったか分かりませんが、なぜにアメリカンデストライアングルなのか。
ロープを使う技術は、きちんとした指導者に教わってから実践しましょう。

気を取り直して、竿を出しながら遡行継続。
この明るい渓相が、魅力なんです!

ランチは、沢の定番である素麺を。
毎度担いできてくれるNおじさん、ありがとうございます。
素麺がこんなに美味しいということを、なぜ今まで知らなかったのでしょうか。

腹ごしらえ後、イワナちゃんのナンパを継続。

釣りをしている時は、一切の雑念が入らないのが良いですね。
何もかもを忘れることができます。

最終的に、ちょっと大き目なイワナをゲットし、マイケルと名付けました。
Nおじさんが釣ってくれたので、私はこの子たちを幕営地まで運ぶ役目を担うこととします。
水を入れたまま運ぶので、結構重い。

いつもの幕営地、乗越沢との出合に到着。
流れから十分な高さがあり、しかも平らな場所という、五つ星幕営地です。

こちらが乗越沢への滝。
ここを登って、鞍掛山へと詰め上がります。

直下から見上げると、こんな感じです。
特に問題なく、ロープを出さずとも登ることが出来ます。

数多くの幕営者を迎えたと思われる焚火跡。
焚火の痕跡は消し去るべきという場合もありますが、跡があれば同じ場所で焚火をするので、その方がいいんじゃないかとも思いますが、どうなんでしょう?

今夜のお宿も完成。
宿泊料0円の、風呂トイレ無し五つ星ホテルです。

さて、ロバートとマイケルを殺りますか。
このコンパクトで切れ味がよいナイフで。

イワナをシメる時は、逃げられないように水から離れた場所で頭をしばきます。
そして動きが鈍くなったところで、内臓やエラを取り除きます。
ところが小ぶりのロバートをシメようとしたところ、ぴちぴちっ!と跳ねに跳ねて、川の流れにぽちゃん、と。
あっけにとられる私達でしたが、ロバートも同じだったようで、一瞬お互いに固まりました。
そして我に返って、ロバートは矢よりも速く泳ぎ去りました。
重いのを苦労して持ってきたのに・・・・・。
こうなったらマイケルは絶対に逃がさないぞ。

というわけで、マイケルはこうなりました。

一杯のかけそばならぬ、一匹のイワナ。
三人で分け合います。
じっくり焼くと、頭まで全部食べられるし、大変美味。
マイケルの命は、私達が受け継ぐよ。

ひとしきり飲んだら、炊飯タイム。
炊飯器に頼らずに米を炊くスキルがあれば、災害時に役立つかもしれません。

焚火がある沢の夜とは、最高に楽しいもの。
とはいえ、たいてい飲みすぎて記憶はない。

ビンディの明るさよ。
こんなにコンパクトなのに。

三日目 乗越沢出合~日向山~下山

毎度おなじみ、起きたら負け合戦の後は、乗越沢への滝を登ります。

乗越沢は流れもだいぶ細くなり、滝が連続します。
登れる滝も多くてシャワークライミングが楽しめますし、巻く場合も踏み跡が明瞭で容易です。

ほどほどの水流を浴びながら滝を登るのは、なかなか楽しいものです。

おっと、Nおじさんのザックからめんつゆが透けてます。
なめられちゃいけねぇんで、濃縮ではなくてストレートです。

あんなに何度も来た沢なのに、スムーズに詰め上がることが出来ず、やたら厳しいトラバースをしてしまいました。
だいぶヒヤヒヤしたものの、無事に鞍掛山のコルへ到着し、日向山へと向かいます。
登山道まで出れば、足元も安心!
コルから右へ行けば鞍掛山の頂上と展望台、左へ行けば分岐に行き当たります。

石楠花ロードでは、かわいいミツバチがお仕事に精を出していました。

クッソ暑い登山道を歩いた後は、日陰なしの日向山砂漠。
蟻地獄みたいにサラサラ崩れる足元が、体力を奪うのです。
きれいには違いないけど、何しろ暑くてヤダ。

これ登るのね・・・。
わずかな距離なのですが、このルート上で一番と言っていいほどイヤなパートです。

汗をかきかき登りつつ、ふと振り返れば、山にいるとは思えない白い砂浜のような斜面。
その向こうに歩いてきた山や谷が見えるのですが、谷底から登ってきたというのが、なかなかいい景色です。
Nおじさんも「いやー、地球で遊んでんなー!」と、なんかいい感じの感想を語ります。

ふと足元を見れば、ありんこが何かをせっせと運んでいるところでした。
つっついてやると、見るからに慌てふためき始める様子が面白い。
それを見て、ひどいだのなんだの言ってた二人も、ありんこに砂をかけたりし始め、ありんこは右往左往。

 
Nおじ
ありー!?

さすが、古典(オヤジギャグ)を忘れない。

日向山の山頂から、眼下に広がる街並みを眺める二人の姿。
さながら、ハネムーンでビーチにたたずむ二人のようです。

 
Nおじ
俺、今日はyesだよ

昭和世代のネタをかましつつ、下山し、カレーを食べて帰りました。

この道の駅の野菜カレーが、地元の季節の野菜を素揚げでトッピングしており、大変おすすめです。