GWの行先は?
社畜が仮釈放されるゴールデンウイークともなれば、それを最大限に享受したくなるのが人情というものでしょう。
しかしこの時期は、沢にはまだ早かったり、人気のエリアは混雑したりで、なかなかに行先選定に苦慮するものです。
というわけで、ベタではありますが、奥穂に登って穂高岳山荘で一杯やるか!となった2025年です。
上高地へのアクセス
奥穂への入り口のひとつである上高地へは、マイカーで入れませんので、沢渡エリアに車を停めます。
今年は一泊800円でしたが、以前に比して値上がりしており、今後も値上がりしていくことでしょう。
基本的に周辺の駐車場は同じ料金ですが、民間の駐車場では、お高い場所もあるかもしれません。
私はたいてい梓第一駐車場に停めますが、トイレは足湯公園の方がきれいでおススメです。
足湯公園のトイレは通年開いており、寒い時期は暖房まできいています。
もはや住めるレベル。
梓第一駐車場
足湯公園のトイレ
ちなみに、松本インターを降りて沢渡へ向かう途中には、「ゴジラに見える木」というものがあります。
これは往路でしか見られません。
沢渡から松本方面へ走る時は、ゴジラには見えないのです。
上高地から横尾まで、花を愛でつつ11㎞歩こう
連休の上高地は、大変な賑わいです。
雪洞を作りに来たあの時とは、大違い。

雪もずいぶん少なくなりました。

横尾までは、約11㎞のゆるやかなアップダウンの歩きです。
これが退屈とか苦痛とかだるいとか、さまざまな意見や感想がありますが、野鳥や植物に興味を持つことが出来れば、なかなかに楽しい散歩道とも言えます。
こちらは「ハシリドコロ」の新芽たちが輪になって生えているところ。
こやつらは、食べると美味しいらしいですが、食べたことはないので断言できません。
食べると錯乱して走り回るので、「ハシリドコロ」と命名されたとか。
Nおじさんは「スベリドコロ」と命名されたとか。

ハシリドコロは、食べられる山菜と間違われる事故があるようですが、日頃から
「食べられる草はないか」
と、いやらしい目で緑を物色している身からすれば、一体どうやったら見間違うのだろうかと思います。
ニリンソウも、間もなく可憐な花を咲かせそうです。

ニリンソウは、「キンポウゲ科と言えば有毒」の中で、珍しく食用にできる植物です。
そしてキンポウゲ科毒草の筆頭とも言うべき「トリカブト」が、とても似た姿をしているのです。
「ゴールデンカムイ」でも取り上げられている野草で、肉の美味しさを何倍にもするそうですが、試したことはありません。
↓こちらはトリカブト(多分)

徳澤園にも多数のテント。
さすがはGWです。

徳澤園付近にある公衆トイレは改築され、きれいになっていました。
しかしさすがに、ウォシュレットはついていません。
ウォシュレットをご希望の方は、徳澤園の脇にある、100円トイレをご利用ください。

フキノトウが真っ盛りです。
天ぷら・・・フキみそ・・・お味噌汁の薬味・・・と妄想は広がりますが、残念ながら採取は禁じられております。

横尾のテント場で一泊目
上高地バスターミナルから歩くこと4時間、やっとこさ横尾に到着しました。
荷が重い(酒のせいか?)とか、年のせいとか、最近運動不足だったからとか、色々と言い訳は思いつきますが、なにせ時間がかかり、そして疲れました。
かつての倍の時間がかかり、年を取ったんだなとしみじみ・・・。

そして、本来は涸沢にテント泊するはずでしたが、もうここでいいんじゃね?と横尾泊に切り替えます。
横尾に幕営装備をデポしていけば、この先は身軽に行けますし、もう暑いし、ビール飲もう!となりました。
しかも、デポならテント張りっぱなしでも料金はいらないとのことでして、なんとも太っ腹です。
テント場の様子はこの通り。

このあたりに張ることにします。

G-LIGHTが二張り。
大きい方はT青年のもので、三人で宴会場として利用した後は、Nおじさんとふたりでイチャイチャするそうです。

そんな二人の愛の巣。
寝具もおそろいで、もう枕もyes/no枕にしたらいいのではないでしょうか。
T青年「Nおじさん、今日どこで寝るんですか?」
Nおじ「え?え?俺テントに入れてもらえないの?」
とじゃれあう二人。

ちなみに涸沢まで行けば、生ビールとおでんやもつ煮を楽しむことができます。

さあ、宴会の準備をしますよ。
こんな時、エバニューのマットが調子いいんです。

菜の花入りソーセージやら、鯛の昆布締めやら、豪華に宴会が始まります。
とことん軽量化して目的地を目指す!
という山への向き合い方もありますが、そんなにストイックではないんです。
酒が進めばくだらない話に花が咲く。
Nおじさんは、酔っぱらってどこぞの雑居ビルに迷い込み、出られなくなったことがあったそうな。
そしてNおじさんのお父さんは、同じく酔っぱらって第百生命の庭から出られなくなったことがあったそうな。
Nおじ父「いやー、どうやっても出れねぇんだよ」
と言ったとか、言わなかったとか。

Nおじさんが、私のナイフを気に入ったようで、なんかの物まねをしています。

スパイダルコのナイフですが、軽量コンパクトで切れ味抜群、これがイワナの腹を開くのにちょうどいいんです。

そうこうしている間に、Nおじさんは力尽きました。
この後どれだけつついても、全く起きなかったため、我々も早々に寝ることにしました。
そもそも遅くまで仕事をした後に、早朝というか夜明け前から運転して歩いているわけですから、疲れない方がおかしいです。

横尾~穂高岳山荘
翌朝、穂高岳山荘を目指して歩き始めます。
幕営装備は横尾に置いて、身軽に行きましょう。

徐々に積雪が現れ始めます。
雪があったりなかったりなので、どこからアイゼンを着け始めるかのチキンレース開催。

そして3人とも、アイゼンが同じという。
アイスクライミング用のアイゼンですが、軽量コンパクトだし、歩きの時も結局こっちを使っちゃうんですよね。

最近では、こんなに高かったっけ!?というお値段になっておりますが、参考までに・・・。
涸沢に近づくにつれ、雪も増えてきます。

涸沢ヒュッテに立ち寄ると、そのまま根っこが生えてしまいそうなので、寄らずに穂高岳山荘を目指します。
いやー、だいぶ遠いな。
何度登っても、ほんとにここ登るの?と言いたくなります。

前穂北尾根を眺めるたびに、あの徹夜山行が思い出されます。

ふーふー言いつつも、たばこ休憩は欠かさないNおじさんとT青年。
青年は、ふーふー言ってませんが。

やっとついた、穂高岳山荘。
もうビール飲みましょう。
山頂?いいじゃん、登ったことあるんだし、今さらさー。

ちなみに山頂まで登った場合は、このような景色を見ることができます。
結構な雪壁を登ることになるので、ガイド登山で来る人もよく見かけます。

穂高岳山荘とはどんなところか
穂高岳山荘では、驚くべきことに、クレジットカードも使えます。
そしてお弁当が美味なり。
酸味のきいた寿司が、疲れた肉体に最高なので、お試しあれ。

部屋は、こちらを3人で貸し切り状態でした。
各スペースがロールカーテンで仕切られています。
コロナ流行後、たいていの山小屋がこのように仕切りを設けるようになり、快適性がアップしました。
布団1枚に3人が寝るというような阿鼻叫喚地獄絵図は、過去の遺物になったと思われます。
平日休みのワタクシとしては、布団1枚に人間1人しか経験がありません。

スマホの充電コーナーもあります。
最近は多くの山小屋が充電コーナーを備えていますが、充電器は持参しないとダメだったりしますので、予約時に確認した方が確実です。

コーヒーやお茶類は、セルフで販売されています。
お釣り用の100円玉も置いてあり、なんとも性善説に基づいたジャパニーズスタイルだな、と。

ロビー的な場所は、朝日が差し込むと紅く染まります。
かつて暴風雨の中、槍から歩いて来た時のことを思い出します。

晩秋×暴風雨×大キレット=二度と行かない / 里美さんの活動データ | YAMAP / ヤマップ
談話室は暖房が大変よくきいていて、晴れていれば暑いほどです。
宿泊者が少ない時は、ここが食事会場になることもあります。

穂高岳山荘での団らん
とりあえず腹減ったし、なんか食うべ。
と言いつつ、山小屋の晩御飯は早いので、おなかには余裕を持たせて夕食に挑みたいところです。
なので、カレー2人前を、3人で分け分けすることにします。

日焼けは顔面で受け止めるNおじさん、今回は晴天にもかかわらず、あまり焼けておりません。
などと、毎度ばかばかしいお話をしつつも、美しい夕焼けを見ることを忘れずに済みました。
お酒も回ってきて、ついでに布団の様子も見たいけど、見に行ったが最後、きっと戻ってくることはできないでしょう。

夕食のメニューです。
水の確保さえも大変な山小屋で、これだけの食事が頂けるなんて、すごいことです。

翌朝は定番の吹雪
翌朝、朝早くから山頂を目指す人がいました。
天気が悪いのに、ご苦労なこって。

我々は、ゆっくりを朝食を頂きました。
お卵様は、生卵でした。

食後のコーヒーやらお茶やらも楽しんだ後、しぶしぶ下山の支度にかかります。

ちゃんと吹雪ですね。
分かってはいたけれども。

なんも見えんやん。
雪の時期は、視界が悪くなると下山ルートを見失いがちです。
登ることはできても、下りは間違った尾根に入ってしまうことがよくあるので、お気を付けください。

「やってる感」を醸し出すT青年。

「やられてる感」を醸し出すNおじさん。

ちらっと涸沢が見えてきました。
ここまで来れば、下るのもだいぶ楽になります。
このルートの下りはとにかく斜度がきつく、高い所が苦手なNおじさんにとっては辛い場所です。
とはいえ、他のパーティーよりも、だいぶペースは速かったです。
Nおじさん、やるじゃん!

雨と砂の洗礼に心折れる
高度を下げるにつれ、雪は雨へと変わり、横尾に着くころにはびっしょびしょ。
張りっぱなしのテントを回収せねばならぬので、橋の下に移動してみましたが、全然意味ありませんでした。
ありとあらゆるものがずぶ濡れ&砂まみれで、なかなかのゲンナリ具合。
本当はこの後、徳澤か小梨でもう一泊して、嘉門次小屋でイワナを肴に一杯やる計画だったのですが、ヤメヤメとなりました。
雨の中の撤収はよくあることですが、テント内で雨に降られるのと、外でびっしょびしょになってからテント内を片付けるのとでは、全然違うんだな・・・。

帰路、雨に降られながらも、狼煙は定期的に上げる二人ですが、どうやらNおじさんのライターの調子が悪いようです。
T青年「じゃあ、僕が美味しそうに吸っているところを見ていて頂ければ・・・」
Nおじ「火ぃちょうだいよ!!!」
というイチャイチャを途中にはさみつつ、水を含んでずっしりと重くなった荷を担いで、横尾から11キロの道のりを歩きます。
途中、ガマの交尾をからかいました。

早く乾いた服に着替えたいなと思いながら、てくてく歩いた11kmも、ようやく終わり。
小梨平に到着です。
天気がよければビールスタンドで一杯やって、イワナを食べに行って、梓川でバチャバチャやりながら飲んで・・・だったんですけどね(泣)

上高地バスターミナルに到着し、タクシーに乗ろうとしますが、受付だか案内だかの人が、
「濡れたものは脱いでお乗りください」
と言いますが、それだと全裸になっちゃうんだけどなぁ。
定型文なんでしょうけども、そりゃないでしょうよ。
タクシーの運転手さんは慣れたものですから、ちゃんと座席にレジャーシートを敷いてくれます。

暖房がきいたタクシーの中はあたたかく、ホッとします。
Nおじ「あったけ~、ここで死んでもいい」
運転手「困りますよ、熊の餌にしちゃいますよ」
そういや昔、初めて「穂高」と名の付くピークをまとめて登った時も、帰りは冷たい雨だったなと思い出しつつ、この先私には何年残されているのだろうかと思うのでした。