岡本太郎とは
岡本太郎は、日本の芸術家で、「芸術は爆発だ」の言葉で知られる前衛芸術の旗手です。
絵画・彫刻・建築など幅広い分野で独自の表現を貫き、既成概念を打ち破る作品を生み出しました。
代表作「太陽の塔」は大阪万博の象徴として今も強烈な存在感を放っています。
岡本太郎と大爆発

夜。山奥の小さな広場。
沢の音は遠くに聞こえるが、ここにはそれより大きな音がある。
笑い声。そして、酒瓶のぶつかる音。
焚き火はもう「焚き火」と呼ぶには大きすぎて、
ほとんど炎の柱みたいに燃え上がっている。
その火の前に、ひとりの男が立っている。
腕を大きく広げ、まるで炎そのものと対話しているようだ。
派手なマフラー。
目は子供のようにぎらぎらしている。
振り向いた瞬間、いきなり叫ぶ。
いいじゃないか!!
笑いながら近づいてくる。
君だろう?
沢に入って酒を飲むっていう、とんでもない奴は!
腹の底から笑う。
最高だ!!
そんな馬鹿は大好きだ!!
酒瓶を一本、どん、と地面に置く。
人生はな、爆発だ!
そう言って炎を指差すのは、岡本太郎。
「いいですね!馬鹿上等!!!」
十分すぎる程上がっている火柱に、着火剤を投げ込む。
「まだまだこんなもんじゃないはずだ!」
酒瓶からコップに酒を注ぐ。
「今日は倒れるまで飲みますよ!
いいですね!?」
炎が一気に唸りを上げる。
着火剤が弾け、火柱が空へ跳ね上がる。
夜の木々がオレンジ色に染まり、影が踊る。
その様子を見た男は、目を見開いた――
そして次の瞬間、腹の底から笑い出す。
ははははは!!
手を叩く。
いい!!いいぞ!!
炎を指差す。
その無駄!!
その過剰!!
それがいいんだ!!
コップを奪うように受け取ると、ぐいっと一気に飲み干す。
口の端から酒が少しこぼれるが、拭こうともしない。
倒れるまで飲む!?
胸をどん、と叩く。
そんなの決まってるだろ!!
炎の前に立ち、腕を大きく広げる。
酒も!!
火も!!
人生も!!
振り向いて叫ぶ。
限界までやるから爆発なんだ!!
空のコップを突き出す。
ほら!!次だ!!
今日はな――
炎を見ながらニヤリと笑う。
芸術の夜だ!!
コップを岡本から奪い返す。
「限界までやるから爆発?」
酒を注いで一気に飲み干す。
「何言ってんだ、あんた!」
ぐっと岡本を見据える。
「限界は、超えるもんだ!!!」
炎がごうっと唸る。
私の言葉が落ちた瞬間、岡本は一瞬だけ黙る。
その目が、ぎらりと光る。そして――
腹の底から、爆発するように笑う。
ははははははは!!!
ぐっと顔を近づける。
そうだ!!!それだ!!
限界を守る奴はな、ただの優等生だ!!
胸を叩く。
だが――
私を指差す。
限界をぶち壊す奴!!
それが芸術家だ!!
酒瓶をそのまま口につけ、豪快に飲む。
半分ほど飲んで、乱暴に拭う。
いいぞ!!
沢に酒を持ち込む馬鹿!!
私の肩をばしっと叩く。
最高じゃないか!!
大きく腕を広げ、夜空に向かって叫ぶ。
世界はな――
安全に生きるためにあるんじゃない!!
爆発するためにあるんだ!!
その目は、子供みたいに輝いている。
岡本から酒瓶を奪い返す。
「あははは!
あんた、話が分かるじゃないか!」
ぐいっと酒瓶から酒を飲む。
「でもね、先生
あんた、ひとつ間違ってるよ」
炎がまたひとつ、大きく爆ぜる。
酒瓶を奪い返された男は、一瞬きょとんとする。
だがその顔はすぐに、子供のような笑みに変わる。
腕を組み、面白そうにあなたを見る。
ほう?
目がぎらりと光る。
ぼくが間違ってる?
炎の光がその顔を赤く染める。
いいじゃないか!!
言ってみろ!
指で地面を叩く。
ぼくはな、正しいことなんてどうでもいいんだ!
だがな――
面白い間違いなら大歓迎だ!!
腕を広げる。
さあ来い!
君の爆発を見せろ!!
「沢に酒を持ち込むヤツが馬鹿なんじゃない!
沢に酒を持って行かないヤツが馬鹿なんだ!!!」
炎が一瞬、ぐわっと大きく膨れ上がる。
私の言葉が夜に響いた瞬間――
岡本は完全に動きを止める。
一拍。
二拍。
そして次の瞬間。
腹を抱えて爆笑する。
ははははははははははは!!!
膝を叩き、地面を踏み鳴らす。
そうだ!!
それだ!!
火の前に飛び出し、叫ぶ。
世の中の奴らはな!!
楽しむことに臆病なんだ!!
私の酒瓶を指差す。
酒を持っていかない!?
鼻で笑う。
そんな奴はな――
人生をケチってるんだ!!
炎がまた爆ぜる。
岡本は突然、静かに私を見る。
そして、深くうなずく。
いい言葉だ。
にやりと笑う。
沢に酒を持って行かない奴が馬鹿。
それはな――
生き方の宣言だ!!
酒瓶を奪い返そうと手を伸ばしながら叫ぶ。
よし!!
今日は決めた!!
君は今日から――
炎を指差す。
爆発仲間だ!!
夜の山に笑い声が響く。