手打そば さか間の「満月会」とは?
満月会は、神奈川県秦野市にある「手打そば さか間」で開催される夜のイベント。
秦野戸川公園のすぐ目の前にある「さか間」は、自家製粉した蕎麦粉を使った手打ち蕎麦のお店で、通常営業のほか、満月会などのイベントも開催している。
満月会では、季節の食材を使った料理を盛り合わせた「満月セット」を中心に、日本酒と一緒に楽しみたい一品料理も用意される。
満月会の開催日や内容については、その都度「手打そば さか間」の公式SNSなどで確認するのがおすすめだ。

鬼石沢へ
入渓点まで
6月30日。
今日は梅雨の晴れ間らしい。
と、雨だった人から総ツッコミが入りそうなことを嘯きながら、夜明けの丹沢湖を横目にハンドルを握る。
丹沢は、安曇野からわざわざ足を運ぶには遠い。
それでも毎年来るのは、さか間があるからだ。
朝6時に箒杉公園駐車場で待ち合わせ、今回はNおじさんと二人だ。
ところが、向かう途中でLINEが入った。
到着7時になってしまうかもです
急ぎます 申し訳ありません
それなら急ぐ必要もないか。
待ち合わせ場所に着いたら車の中で寝ていればいいやと、そのまま向かう。
ところが。
6時前に到着すると、間もなくNおじさんがやってきた。
約束の時間通りだ。
どうやって来たのかは、聞かないことにした。
法律は守らなかったかもしれないが、私との約束は守ったらしい。
※駐車場所やアクセスについては、マスキ嵐沢の記事で詳しく紹介しています。
梅雨の晴れ間のはずが、薄曇りの天気とここ数日の雨のせいで、沢はうっすらと濁っている。
それでも十分きれいと言えるほどの透明度ではあるが、普段のアクアマリンのような色を知っている身からすると、少々残念だ。

30分も歩けば、マスキ嵐沢の入渓点に着く。
この沢は、さか間に行きたいがために、何度遡行したことか…。

登山道をさらに30分ほど登ると、一軒屋避難小屋に着く。
コースタイムでは、登山口から1時間20分かかるらしい。
道中、ヤマビルの姿も見られた。
今回は被害に遭わなかったが、西丹沢もヒルによる汚染が広がってきたことを実感できる。
ああ、塩を持ってきたらよかった。

快適な滝が続く
ここにもマスキ同様に「鬼石沢」と表示がある。
ここから入渓する。

鬼石沢はマスキ嵐沢同様、水量は少なめ。
なんとも平和な渓相だ。

すぐに、最初の滝が出てくる。
ぬめりもあまりなく、フリクションがよく効いて登りやすい。
やっぱり夏の丹沢は、シャワークライミングが最高だ!

Nおじさんも快適に登ってくる。

確かこの滝だったと思うが、一か所だけ巻いた。
今、写真で見ると、余裕で登れそうに思うのだが、中間支点が取れなさそうなので巻くことにした。
後から知ったが、残置ハーケンがあるらしい。

チワワの恩返し
巻きは、足元グズグズの泥壁だった。
途中で、普通に滝を直登した方がよかったかと後悔するほどに。
Nおじさんには、沢をやる人らしからぬ弱点がある。
高い所やクライミングが苦手なのだ。
そんな場所に来ると、チワワのような瞳で助けを求める。
「ロープちょうだい…」
目で語り、そして、
「キューン…」
と機能停止する。
今回もこの高巻きで、チワワになった。
仕方がないので私が先に登り、上からロープで確保し、無事にチワワを回収した。
しかし後半、今度は腕力の必要な登りで、私が苦戦することになった。
先に突破したNさんから、お助け紐が下りてくる。
チワワの恩返しだ。
沢でしか味わえないもの
ミソサザイのさえずりを聞きながら、美しく苔むした沢を進んでいく。
途中には、幕営によさそうな平らな場所がいくつもあった。
「ここで泊まったら気持ちいいだろうな」
そんなことを考えながら歩く。
沢登りの醍醐味は、やっぱり夜の焚火と酒だ。
だから私は、日帰りの沢にはあまり行かない。
今回は夜に満月会が待っているから、話は別だ。

ゴルジュの中を進むのは、普通では来られない場所を歩いている感覚がして気持ちいい。
しかも6月30日の火曜日。
土日休みの仕事の人は、きっと月末のあわただしさに忙殺されているだろう。
こちとら気持ちよく沢で遊んで、しかも夜は満月会。
最高すぎた。

五年ぶりの胎内くぐり
巨大な岩が折り重なる場所にやってきた。
最初は左側の滝を登ろうと思った。
近づいてみる。
「あれ?」
手がかりも足がかりもない。
これはダメだぞ。
そこで右側の岩の隙間をのぞいてみると、赤い矢印があった。
「あ! これ、胎内くぐりの岩だ!」
実は二人とも、五年ほど前に一度この沢へ来ている。
しかし記憶はかなり断片的だ。
胎内くぐりのことも、すっかり忘れていた。

岩の隙間へ潜り込み、抜けていく。
五年前はもう少し苦労したような気がするのだが、今回は意外なほどすんなり突破できた。
私たちも、少しは成長したのかもしれない。

沢登りの楽しみは、その場に応じて工夫したり、力を合わせたりして突破していく所にあると思う。
水量やぬめりや倒木やパーティーのコンディション、天候、本当に毎回違う。
それを、過去の記録やらマニュアルやらに従っていくだけじゃなくて、自分たちの装備や技術を駆使して、自分たちだけの正解を導き出す。
登山道みたいに、決められた道を歩いて、そこからはみ出しちゃダメっていうのじゃないのが、いい。
ヤブ漕ぎなしの快適なツメ
沢筋に従って登っていくと、ヤブ漕ぎもなく登山道に出る。
しかし傾斜はそれなりに急だから、容赦なくふくらはぎが持っていかれる。
登山道に出たら、そこからまた急な階段。

階段を上がり切ったら、立派な避難小屋がある。

とりあえず一応、避難小屋から100mの畔ヶ丸までは行った。
何も眺望はないし、どうでもいいといえばいいが、一応踏んだ。

避難小屋の前でおにぎりを食べて、避難小屋の中を覗いた。
トイレはチップ箱がないが、紙は備え付けられておらず、使用した紙も流せないため、持ち帰る必要がある。
沢装備だったのでビニール袋などは持っていて困らなかったが、一般登山で訪れる場合は、トイレットペーパーと持ち帰り用の袋を用意しておいた方が安心だ。
利用する人みんながルールを守ることが、トイレを維持することにつながる。

のんびり下山
のんびりと下山を開始する。
急ぐ理由はない。
むしろ、早く下山してはいけない。
満月会は17時30分から。
あまり早く下りてしまうと、宴が始まる前に出来上がってしまう。
大滝橋へ下る登山道は、ところどころ急な勾配が続く。
「ここは登りたくないな……」
と思いながら下る。
考えてみれば、沢でも同じだけの高低差を登ってきたはずなのだ。
それなのに、沢ではあまり「登らされた」という感じがしない。
滝を登ったり、ルートを考えたり、ゴルジュを進んだり。
目の前のことに夢中になっているうちに、高度を稼いでいるからなのだろう。
初めてのどんぐり山荘
どんぐり山荘へ
下山後、コンビニでいろいろと仕入れて、どんぐり山荘へ向かう。
いつもは大倉山の家に泊まっているが、たまたまこの日は先方の都合が悪く、どんぐり山荘に初めて泊まることになった。
15時半頃到着し、さらにもう一名と合流した。
どんぐり山荘は、一人一泊4,050円だった。
大倉山の家より少しだけ高いけど、その価値はあった。
玄関から入ったら、作りが山の家と似ていたが、なんとキッチンがある!
自炊する人も多いらしい。
食器棚にいっぱい食器やグラスやジョッキがあって、自由に使える。
使った後は、洗って置いておいてくれればいいとのこと。
冷蔵庫や電子レンジもあって、お風呂も使える。

大倉山の家は、自宅の一室に泊まるスタイルだが、ここは完全に別棟。
なんでも築百年以上らしいが、 エアコンや扇風機もある。
ただ、大倉山の家はウォシュレットがあるけど、ここはない(笑)

どちらの宿も、甲乙つけがたい。
そして滝沢園キャンプ場だって、キャンプが好きならおすすめだ。
好みに合わせて選べばいいと思う。
沢より厳しい戦い
ここから二時間半、
「いかに空腹と酔い具合をコントロールするか」
という、沢とは別の戦いが始まった。
とりあえず350ml缶を二本。
……いや、これはいけない。
このペースでは、本番が始まる頃には出来上がってしまう。
その後は水を飲んだり、荷物を整理したり、宿を見て回ったりして、自分をごまかしながら時間を潰した。
17時。
ついには秦野戸川公園へ散歩に出かける。
健康のためではない。
酒を飲まないためである。
本日のメインイベント、満月会
思いがけない誕生日プレゼント
満月会には、さらにもう一人合流し、計四人となった。
来てくれたのはKuri Adventures代表の栗山さん。
ロープワークやバリエーションルート、沢登りの技術を教えてもらった、私にとって師匠のような人だ。
かなり忙しそうだったので、来られないかもしれないと思っていた。
それでも誘ってみたら、来てくれた。
しかも、誕生日プレゼントまで持って。
開けてみると、ワカサギの投げ釣り用タックル一式。
私は普段、ドーム船で電動リールを使って釣るのがメインなので、投げ釣りはやったことがない。
嬉しい。
嬉しいのだが。
栗山さんが立ち上げたパッククラフトのビジネス「釣筏」のYouTube撮影で働け、という無言の圧力だった。
そんな重圧を受けつつ、ありがたくいただいた。
日本酒泥棒、焼きみそ
そして、満月会が始まる。
満月を模した丸いプレートには、季節の料理が美しく盛り付けられている。
この日の満月セットは3600円。
稚鮎春巻、大徳寺納豆を使った料理、山百合豚の朴葉焼き、玉蜀黍豆富、海老冬瓜、甘長おひたし。
とろ茄子と穴子の天ぷらに、秋田生じゅんさいの冷かけ蕎麦。

相変わらず、どれも美味しい。
追加で一品料理も頼む。
稚鮎の天ぷら。
湘南しらすのかき揚げ。

どちらも最高だった。
しかし、私のおすすめは焼きみそだ。
しゃもじに塗られた味噌が、こんがりと香ばしく焼かれている。
見た目は地味だ。
天ぷらのように、誰もがメニューを見て、
「美味しそう!」
と注文する料理ではないかもしれない。
しかし、これが危険なのだ。
日本酒が進む、などという生易しいものではない。
日本酒泥棒にもほどがある。

また、丹沢へ
最後は、店の前でみんなで記念撮影。
あとで写真を見てみると、暖簾の向こうで店主さんまでこっそりポーズを決めていた。
ほんと、好きなんだ。この店。
たまにしか来られないけれど。
沢を歩き、仲間と笑い、美味しい酒と料理を囲む。
そして最後に、また来ようと思う。
だから私は、また丹沢へ来る。

基本データ
遡行日 2026年6月30日
所要時間 6時間55分(休憩含む)
距離 10.7km
高低差 938m
グレード 1級上
携行推奨品
・塩
・トイレットペーパー
・チャック付きゴミ袋